1.Y県は、昭和33年5月21日に公立学校の教職員Xらに支給した給与中に1日分の給与の過払があったことから、同年8月21日に支給された給与から減額したところ、Xらはこれを不当として、減額分の返還を求めて提訴したもの。
2.福岡高裁は、3か月経過した後の賃金との相殺は、時機を逸しており、例外的に許容される場合に該当しないとし、最高裁もこれを維持し、上告を棄却した。
賃金過払による相殺は、過払のあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされ、その金額、方法等においても労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのないものである場合にかぎり、許されるものと解される。
Y県は、過払分を翌6月分の給与から減額することが可能であったのに、8月分の給与から減額を行ったものであり、その遅延した主たる理由は、減額をすることの法律上の可否等の調査研究をしながら、当時同種事案をかかえていた東京都の動向を見守っていたところにあるのであるから、本件相殺は、これをした時期の点においていまだ例外的に許容される場合に該当しないとしている原審の認定判断は、正当として首肯することができる。
引用/厚生労働省サイト