正社員の一般的な定義は、労働契約の期間が定められていない、フルタイムの労働時間、直接雇用されている人材を指します。正社員は、一度入社すれば安定した雇用が保障され、長期的なキャリアアップや福利厚生、年金制度などの社会保障も受けられることが特徴です。
しかし、アフターコロナの社会においては、個人が自由に働ける環境を提供することにより、従来の働き方にとらわれず、自己実現や生活の充実感を得られる多様な働き方が求められています。その中で注目されるのが「多様な正社員」です。
多様な正社員は、配置転換や転勤、勤務地や勤務時間の選択が可能であることが特徴です。これにより、個人がライフスタイルに合わせた働き方ができるようになり、仕事とプライベートのバランスを取りやすくなります。例えば、家庭があり、育児や介護をしなければならない方々にとって、勤務地や勤務時間が限定された従来の正社員では働きにくいことがありますが、多様な正社員であれば、家庭との両立がしやすくなります。
また、多様な働き方ができる企業には多様な人材が集まり、組織の多様性が企業の成長につながる期待があります。例えば、地方にも拠点を持つ企業が、転勤や遠隔勤務、在宅勤務などの働き方を許容することで、都市部に居住する人材だけでなく、地方在住の人材も採用することができます。これにより、地方創生にも貢献できます。
厚生労働省の「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書によると、多様な正社員を導入している企業は約5割に達し、その導入理由は、ワーク・ライフ・バランス支援、優秀な人材確保、従業員の定着を従業員の定着を促進することにあります。
従来の正社員は、入社後に企業に長期間勤務することが期待されますが、現代の若者からは、自己実現や多様な経験を積むことが求められるため、企業に長期間勤務することが難しくなっています。そのため、多様な正社員という働き方を導入することで、従業員の定着を促進することができます。また、企業が従業員の希望に沿った働き方を提供することで、ワークライフバランスが実現でき、従業員のモチベーションを高め、業務の生産性向上にもつながります。
しかしながら、多様な正社員を導入することには、人事制度や労働条件の変更など、企業側の組織改革が必要となります。
また、従業員自身も、柔軟性のある働き方に対応できるスキルやマインドを持つ必要があります。そのため、企業と従業員が協力して、多様な正社員を導入し、働き方改革を進めることが求められています。
このように、多様な正社員は、アフターコロナの社会において、個人の多様なライフスタイルや働き方に合わせた働き方が求められ、企業の多様性や地域経済の発展にも貢献することができます。
勤務地の範囲が限定したり、転居を伴わない正社員など。
※ 近年では、テレワークを活用して正社員全体の転勤をなくし、労働者が勤務地を選べるようにする動きもあります。
担当する職務内容や仕事の範囲が限定された正社員。
※ 工場の技能労働者や店舗の販売員、一般職などについては、職務の範囲に一定の幅を持たせた方が、事業の円滑な運営や労働者のキャリア形成に影響が少ないと考えられる。
所定労働時間がフルタイムではない、あるいは残業が免除されている正社員。
※ 現在では、勤務時間限定正社員があまり活用されていませんが、導入する場合には、勤務時間が限定される労働者のキャリア形成支援や、適切な業務配分、人員体制の整備、長時間労働を前提としない職場環境づくりなどが必要とされる。
家庭事情や移動の難しさなどによる従業員の退職を防ぐことができ、優秀な人材を確保・定着させることができます。
従業員がワーク・ライフ・バランスを実現し、従業員のエンゲージメントが向上することで、モチベーションが高くなり、生産性が向上することが期待できます。
多様なバックグラウンドを持つ従業員に正社員として働いてもらうことで、多様な経験や能力、個性による視点や思考を取り入れることができます。そのため、様々なアイデアが生まれ、革新的なアイデアを生み出すことができます。また、多様な正社員として働くことができる選択肢を提供することで、地元に定着したいと望む優秀な人材の採用が可能になり、定着も促進することができます。