年次有給休暇は、一定期間働いた労働者に与えられる休暇であり、心身の疲労を回復させ、充実した生活を送るために利用されます。
この休暇は「有給」になるため、取得しても賃金が削減されることはありません。
年次有給休暇は、労働基準法第39条で規定される労働者の権利であり、企業は該当する労働者を雇用している場合、企業の規模や業種に関係なく、全従業員に対して年次有給休暇を与える必要があります。
年次有給休暇付与の要件は以下の2つです。
・労働者が雇用されてから6か月以上経過していること。
・上記の期間の労働日のうち、8割以上出勤していること。
これらの条件を満たす労働者には、10日間の年次有給休暇が与えられます。
そして、初めて年次有給休暇が与えられた日から1年経過すると、同じ条件を満たせば、11日間の年次有給休暇が与えられます。その後も条件を満たすことで、年数に応じた年次有給休暇日数が与えられます。
有給休暇の付与日数は、労働者の雇用形態、状況、勤続年数によって異なります。
以下の付与日数は、労働基準法によって定められた有給休暇の最低基準ですので、これらの日数を付与することは法的に義務付けられています。しかし、会社独自の規定により、これ以上の日数を付与することや、入社時から有給休暇を与えることも問題ありません。
週の所定労働時間が30時間以上、週の所定労働日数が5日以上の労働者、または1年間の所定労働日数が217日以上の労働者に対する有給休暇の付与日数は、以下のようになります。
労働日数が常勤労働者と比較して少ない場合、年次有給休暇の付与日数も比例的に減少します。
週の所定労働時間が30時間未満であり、かつ、週の所定労働日数が4日以下、または1年間の所定労働日数が48日から216日までの労働者に適用されます。
週に出勤する日数が多い労働者ほど、有給休暇の日数も増えます。
原則として、有給休暇の付与単位は1日とされています。
通常、有給休暇は1日単位で取得することになりますが、労働者と雇用主の合意がある場合は、半日単位や時間単位での有給休暇を取得することも可能です。
ただし、時間単位での有給休暇については、労働基準法第39条の4項によって、年間5日を上限として規定されています。
半日単位での有給休暇は労使協定が締結されていなくても付与が可能ですが、時間単位での有給休暇を取得するためには労使協定が必要です。
有給休暇は使用期限が2年間あります。たとえば、最初に半年の継続勤務で付与された有給休暇は、1年後の次回付与時まで繰越が可能ですが、その後の継続勤務が2年半経過した時点で未使用の初回付与分の有給休暇は失効します。
労働基準法では、有給休暇の取得日の賃金計算には3つの方法が認められています。
有給休暇を取得した日を通常の出勤日とみなし、通常通りの給与計算を行う方法です。
この手法は一般的で、計算が容易です。有給休暇を取得した日には通常の勤務日と同じ金額の賃金が支払われます。
直近3ヶ月間の給与と所定労働日数から求めた平均賃金を基に給与計算を行う方法です。
平均賃金を有給休暇の期間に対する給与として支給する場合には、以下の2つの計算方法を比較し、より大きな金額を選択します。
*計算方法
平均賃金を有給分の給与として支給する場合には、以下の2通りの計算をして、金額が大きい方を使用します。
①直近3ヵ月の賃金の総額÷休日を含んだ全日数
健康保険料の算定に利用する「標準報酬月額」を用いて給与計算する
*計算方法
標準報酬月額÷月の日数
労働基準法の改正により、2019年4月から10日以上の有給休暇が付与された労働者に対して、付与日から1年以内に5日の有給休暇を取得させることが企業側の義務となりました。
例えば、就業規則で入社日に10日の有給休暇を付与する場合、入社日から1年以内に5日の有給休暇を必ず取得させる必要があります。ただし、この5日には時間単位の有給休暇は含まれませんので、時間単位の有給休暇を導入している会社は注意が必要です。
労働者が年間5日の有給休暇を取得できない場合、会社側は労働基準法に違反することになります。そして、有給休暇が取得できなかった労働者1人につき、30万円以下の罰金が科せられます。
労働者が有給休暇の取得を希望しない場合でも、使用者は時季を指定し、労働者と相談の上で必ず5日の取得を徹底するために管理を行う必要があります。
また有給休暇の取得義務化に伴い、使用者は「年次有給休暇管理簿」を作成し、期間が満了した後3年間保存する義務が課せられました。これにより、会社側は労働者ごとに基準日や時季、取得日数などを記録し、5日の有給休暇の取得漏れがないよう、従業員一人ひとりの取得状況を把握し、管理する必要があります。