固定残業代とは、毎月一定の額を設定して支払われる残業代の制度です。
実際の残業時間に関わらず、時間外労働に対してあらかじめ定められた時間分の残業代が支給されます。
例えば、固定残業代を15時間と設定した場合、毎月15時間分の残業代が支払われます。このため、15時間までの残業については追加の残業代は支給されません。しかし、15時間を超える残業については、超過分に対して追加の残業代が支払われる必要があります。
例えば、20時間働いた場合、超過した5時間分に対して追加の残業代が支払われることになります。
固定残業制度を導入すると、従業員の給与額はほぼ一定となります。
残業の有無に関わらず、支給される給与は変わりません。このため、「長時間残業をして稼ごう」という従業員の意識が減少し、「同じ給与なら効率的に業務をこなして定時で帰ろう」という考え方が増える可能性があります。その結果生産性の向上が期待されます。
さらに、従業員が集中して業務に取り組むことで、創造的なアイディアが生まれやすくなる効果や、長時間労働が難しい職場環境に変化することで、働きやすさを感じる効果も期待できます。
固定残業制度を導入すると、規定時間までの残業代の計算が不要となります。
例えば、「月15時間の固定残業を給与に含む」という規定で働く従業員が、15時間までの残業時間の場合、支給される給与の金額は変わらないため、残業代を計算する手間が省けます。
但し、15時間を超える残業時間がある場合は超えた残業時間に対する賃金の支給は必要になりますので注意が必要です。
固定残業を導入することで残業代が固定化され、給与額の大幅な変動が抑制されます。
これにより、企業は人件費を正確に把握できるため、支出の大部分を占める人件費に関する事業予測や資金繰り計画を立てやすくなるというメリットがあります。
固定残業は、給与に固定残業代が含まれている制度ですが、残業代支給が一切行われないものではありません。定められた残業時間を超えた場合には残業代が支給されます。
しかし固定残業代に対する認識不足によって、「固定残業代が給与に含まれているので、それ以外の残業代は一切支給されない」といった誤った認識が広がり、サービス残業が広まるリスクがあります。
固定残業制度は、残業代を支払わずに済む制度ではなく、最初から一定レベルの残業代を給与に含めて支給する制度です。
従業員の実際の残業時間が規定の上限に達しなくても、残業代を含んだ給与を支払わなければなりません。また、固定残業時間を超えて残業した場合には、その超過分に対して割増賃金を従業員に支払う必要があります。つまり、あまり残業が発生しない企業では、むしろ人件費が上昇する要因となる可能性があります。
1時間あたりの賃金=基本給÷1ヶ月の平均所定労働時間(※1)
(※1.)1ヶ月の平均所定労働時間=(365日−年間休日数)×1日の所定労働時間÷12ヶ月
月給額を月平均所定労働時間で除することで、従業員の1時間あたりの賃金額が算出されます。この月給額からは基本的に①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金を控除します。ただし、上記の①~⑦に該当する場合であっても、従業員に一律に支給される場合は除外せず月給に含めて計算します。
Step1で算出した1時間あたりの賃金に、割増率(25%以上)を乗じ、1時間あたりの割増賃金を算出します。
1時間あたりの賃金×割増率(1.25以上)
対象の従業員が実際にどの程度の残業を行っているかを確認し、各従業員に見込まれる残業時間を想定して設定します。
固定残業代=1時間あたりの賃金額×1.25×設定した残業時間
また、1日の所定労働時間が8時間未満の場合、割増賃金の対象外となる残業時間の出るケースもあります。詳しくは当事務所までお問い合わせください。