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メンタルヘルス不調者を出さない、悪化させない対策

近年、労働者のメンタルヘルス不調が深刻な問題として取り上げられるようになっています。

厚生労働省の令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」の結果によると、過去1年間(令和2年11月1日から令和3年10月31日までの期間)にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所の割合は10.1%となっており、約1割の事業所においてメンタルヘルス不調による休業者が発生したとの結果になっています。この数字は統計上の数字であって、実際にはもっと多くのメンタルヘルス不調による休業者がでていることがうかがえます。

 

グラフ

引用/令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」

 

一方、企業の側から見ると、労働者のメンタルヘルス不調が企業に与える影響も深刻です。

厚生労働省の「令和3年労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、企業の経営者や管理職が抱えるメンタルヘルスの問題は、従業員が抱える問題よりも深刻であると回答した人の割合が52.2%に上ります。また、企業におけるストレスチェックの実施状況については実施率は約65%となっており、改善の余地があるとされています。

グラフ

引用/令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」

 

以上のように、労働者のメンタルヘルス不調が深刻な問題として取り上げられるようになっており、その影響は企業にも及んでいます。

労働環境の改善やメンタルヘルスのケアに対する取り組みが重要であると言えます。

 

メンタルヘルス不調を悪化させないために

一次予防(未然防止)

ストレスの原因を減らすために、労働環境の改善が必要です。

例えば、長時間労働や過剰な業務負担の軽減、職場の快適性の向上、コミュニケーションの改善などが挙げられます。また、従業員が自分の働き方やストレスの原因を把握できるよう、ストレスチェックや職場のアンケート調査などを行うことも有効です。

さらに、メンタルヘルスに関する教育や啓発活動を実施することも重要です。

従業員がメンタルヘルスについて正しい知識を持ち、自己管理のスキルを身につけることができれば、ストレスや心の不調を未然に防ぐことができます。具体的には、メンタルヘルスに関する講演会やセミナー、ストレスマネジメントやメンタルヘルスのケアについての研修などが挙げられます。

 

二次予防(早期発見)

メンタルヘルスの二次予防では、早期発見が重要です。

例えば、定期的な健康診断を受けることで、メンタルヘルス不調の初期症状を発見することができます。特に、ストレスチェックやメンタルヘルスに関するアンケート調査を実施することで、従業員のストレス状況やメンタルヘルスの状態を把握し、早期発見につなげることができます。

また、上司や同僚が、従業員の働き方や態度、表情などを観察することも有効です。

上司や同僚とのコミュニケーション改善を促進することで、気軽に相談できる環境を整えることができます。

さらに、企業が従業員に精神保健福祉センターなどの利用を促進することで、早期にメンタルヘルス不調の治療を受けることができます。専門家によるカウンセリングや心理療法を受けることで、精神的な負荷を軽減し、回復を促進することができます。

 

三次予防(職場復帰を支援)

まず、職場復帰の際には、専門家による支援が必要です。

心理療法やカウンセリングを受けることで、精神的な負荷を軽減し、自信を取り戻すことができます。また、従業員が職場に戻る際には、上司や同僚の理解やサポートが必要です。職場内でのカウンセリングや、社員同士のコミュニケーション改善などが有効です。

次に、復職後には、適切な業務環境の整備が必要です。

具体的には、業務の負荷やストレスの軽減、適切な休憩時間の確保などが挙げられます。また、フレックスタイム制度や在宅勤務など、柔軟な働き方の導入も有効です。

さらに、社員のリハビリテーションや復職支援を行うことも重要です。

例えば、職場復帰前に実施される仕事復帰支援プログラムや、社内でのスキルアップ支援、リハビリプログラムの提供などが挙げられます。

 

メンタルヘルス不調者を出さないために

心理的安全性の高い職場に

「心理的安全性(psychological safety)」とは、チームや組織のメンバーが自分自身の意見やアイデアを自由に表明し、誤りやミスを恐れることなく率直に意見交換ができる状態のことを指します。

この状態にあるチームや組織は、創造性や生産性が高まり、イノベーションを促進することができます。

例えば、心理的安全性が高いチームでは、新しいアイデアや提案を出すことが容易であり、それに対してフィードバックが得られるため、メンバーは積極的に参加することができます。また、ミスや失敗に対して非難や罰則ではなく、改善策を共同で探り、改善に向けて取り組むことができるため、成長意欲が高まります。

一方、心理的安全性が低い場合、メンバーは意見を言いづらく、自己防衛的になるため、チームや組織の目的を達成することが難しくなります。また、ミスや失敗に対して非難や罰則があると、メンバーは失敗を隠したり、責任を回避したりすることがあり、問題が解決されずに悪化することもあります。

心理的安全性は、チームや組織が高いパフォーマンスを発揮するために欠かせない要素であり、リーダーシップやコミュニケーションの改善によって促進することができます。

 

心理的安全性が高い職場のメリット

心理的安全性が高い職場には、以下のようなメリットがあります。

■コラボレーションが促進される

心理的安全性が高い環境では、社員が自由にアイデアを出し合い、フィードバックを交換できるため、コラボレーションがスムーズに進みます。社員は自信を持って自分のアイデアを提出し、より創造的で革新的な解決策が生まれる可能性が高くなります。

■チームワークが向上する

心理的安全性が高い環境では、チームメンバーがお互いを尊重し、自分の意見を自由に言い合うことができるため、より強力なチームワークが形成されます。メンバーは、問題や課題に対してオープンに議論し、協力して解決策を見つけることができます。

■個人の成長が促進される

心理的安全性が高い環境では、社員が自己表現し、自分自身を成長させることができます。フィードバックが頻繁に行われ、社員は自分の強みや改善すべき点を正確に把握することができます。これにより、社員はより良いパフォーマンスを発揮し、個人の成長が促進されます。

■ストレスが軽減される

心理的安全性が高い職場では、社員が自分自身を自由に表現し、フィードバックを受け取ることができるため、ストレスが軽減されます。社員は安心感を得られるため、仕事に集中しやすく、生産性が向上することが期待できます。

 

心理的安全性が高い職場環境にするためには

■オープンコミュニケーションの促進

職場内でオープンなコミュニケーションを促進することは、従業員が自分の意見や感情を自由に表明できるようにし、心理的安全性を高めることにつながります。管理職は、積極的に従業員からのフィードバックを求め、聴取する姿勢を示すことが大切です。

■チームビルディングの強化

チームビルディング活動を通じて、従業員同士の信頼関係や協調性を高めることができます。従業員は、自分たちの役割や責任を理解し、互いに支援しあうことで、心理的安全性を高めることができます。

■ワークライフバランスの確保

従業員が長時間労働やストレスによって心身ともに疲かれ果てないように、ワークライフバランスを確保することが大切です。定期的な休暇やフレキシブルな勤務時間制度の導入などが考えられます。

■フィードバック文化の構築

従業員が上司や他の従業員にフィードバックをすることができる文化を構築することは、自己改善のためのチャンスを提供し、職場全体のレベルアップにつながります。フィードバックは、ポジティブなものからネガティブなものまでありますが、従業員同士が互いに尊重しあい、建設的なアドバイスをすることが求められます。

■精神衛生の支援

精神的な健康は、仕事のパフォーマンスに大きな影響を与えます。職場では、ストレスマネジメントやカウンセリングなど、精神衛生のためのサポートを提供することが大切です。従業員が安心して相談できる環境を整え、必要な支援を提供することが求められます。

 

                                       

メンタルヘルスケアの目的は、従業員の心理的な健康を維持し、ストレスや不安、うつ病などの精神的な問題を予防し、治療することにあります。

メンタルヘルスケアは、従業員の生産性を維持するために極めて重要です。

ストレスや不安、うつ病などが原因で従業員が休暇を取ることが増えると、生産性が低下することがあります。メンタルヘルスケアを提供することで、従業員が健康的な状態を維持し、仕事に集中できるようになります。

また、従業員の安全性を保障するためにもメンタルヘルスケアに取り組む必要があります。精神的な健康状態が悪化すると、職場での事故やトラブルが増える可能性があるため、メンタルヘルスケアを提供することで、従業員が職場で安心して働けるようになります。

企業は社会的責任を果たすことが求められています。

その一環として、従業員のメンタルヘルスケアに取り組むことが必要です。

組織はメンタルヘルスケアを提供することにより、従業員のメンタルヘルスを重視する姿勢を持つ必要があります。また、従業員がストレスや不安を抱えたときには、適切な支援を提供することが求められます。

各従業員は自己管理能力を高め、ストレスをコントロールする方法を身につけることが求められます。ストレスや不安を感じた場合には、上司や同僚、専門家などに相談することが重要です。

 

メンタルヘルスケアは組織と個人の双方が意識し、取り組むことが求められます。