「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が他の相談内容と比較して圧倒的に多くなっており、ハラスメント対策が急がれる結果となっています。
近年、ハラスメント問題は深刻化しており、労働者の心身に悪影響を与え、組織の業績や信頼にも悪影響を与える可能性があります。
企業はトラブルを未然に防止するためのハラスメント対策を講じることが求められています。
ハラスメントを防止するために、企業は法律で定められた義務を負っています。ハラスメントの種類によって適用される法律が異なります。たとえば、職場でのパワーハラスメントは「労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)」、セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントは「男女雇用機会均等法」、育児休業などの制度利用に関するハラスメントは「育児・介護休業法」によって規制されています。
具体的な対策としては、ハラスメントに対応するために一つひとつの事例に対応するのではなく、一元的な相談体制を整えることが重要です。労働者が相談しやすい環境を整備し、相談に対応できる窓口を設ける必要があります。また、ハラスメント防止対策を包括的に進めることが理想的です。
パワーハラスメントとは、職場で行われる以下の要素をすべて満たす行為を指します。
上位の地位や権限を持つ者が、その権力を背景にして行う言動を指します。これには、侮辱的な発言や脅迫、差別的な扱いなどが含まれます。
業務遂行に必要な範囲を超えて行われる行為です。これは、仕事に関係のない個人的な要求や無理な負荷、過度な監視やパフォーマンスへの不当な圧力などを含みます。
労働者の就業環境に悪影響を与える行為です。被害者が心理的な苦痛やストレスを経験し、働きやすさやメンタルヘルスに支障をきたす場合があります。
なお、適正な業務指示や指導は、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われるものであり、パワーハラスメントには該当しません。
直接的な暴力行為、例えば暴力的な体の接触や傷害を加える行為。
労働者に対して暴力的な脅迫を行い、身体的な危害を加える行為。
口頭での侮辱、脅迫、嫌がらせの言葉を使って労働者を傷つける行為。
過度な批判や否定的なフィードバックを繰り返し行い、労働者の自尊心やメンタルヘルスを害する行為。
労働者を仕事や情報の流れから孤立させる行為。例えば、労働者を会議やプロジェクトから排除する、重要な情報や意思決定から疎外するなど。
業務上の負荷や仕事量を理性的な範囲を超えて過度に増やす行為。
不合理な納期や無理難題を課すことによって労働者をストレスや過労状態に追い込む行為。
業務上の能力や責任に応じない低レベルな仕事を与える行為。例えば、資格や経験に見合わない極めて単純なタスクを割り当てるなど。
労働者のプライバシーを侵害する行為。例えば、個人的な情報を不適切に公開する、プライベートな場所での監視など。
・パワーハラスメントに対する明確な方針を策定し、従業員に周知徹底する。
・ポリシーやルールを含む行動規範を作成し、従業員に遵守を求める。
・パワーハラスメントに対する教育や啓発活動を定期的に実施し、従業員の意識を高める。
・パワーハラスメントの報告や相談を受け付ける窓口を設置し、被害者が安心して相談できる環境を整える。
・信頼できる専門の担当者や委員会を設けて、報告や相談に対応し、適切な対策を講じるための体制を整備する。
・職場におけるパワーハラスメントに関する事後の迅速かつ適切な対応:
・適切な制裁措置を講じると同時に、再発防止策や被害者の支援策を実施する。
・報告者や関係者の情報を適切に保護し、秘密裏に対応することを確保する。
・パワーハラスメントの予防に向けた教育やトレーニングを提供し、従業員の意識とスキルを向上させる。
・組織文化を育成するための取り組みを推進し、尊重や協力を重視する環境を醸成する。
・パワーハラスメント防止の取り組みや結果を定期的に評価し、改善策を継続的に検討する。
労働者にとって、ハラスメントは大きなストレスや苦痛を与えるだけでなく、会社の業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。
企業では、意識啓発やトレーニング、相談窓口の設置、コミュニケーションの促進やストレス管理の支援、組織文化の改善等の対策が求められます。
管理職はハラスメント防止の重要性を認識し、積極的に取り組むことで全組織に浸透させることが必要です。
組織全体の健全な発展に向けて、ハラスメント対策に積極的に取り組んでいくことが求められます。